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柴山文科大臣が高校生のツイートに対して、「こうした行為は適切なのでしょうか?」とリツイートしたことに波紋が広がっている。これは、大学入試改革において、英語の試験が「英検」などの民間資格が2021年から採用されることに対して、未だに決まっていないことが多かったり、民間資格を受けるのに今までよりお金がかかってしまうことに対する批判から発生したものだ。そもそも、大学入試改革がうまくいっていないことに問題がある。
柴山文科大臣 Twitterで高校生の政治話に疑問呈し非難殺到(女性自身)
こうした行為は適切でしょうか? RT @d_ok3a: @NI84USx7ecHjMU7 私の通う高校では前回の参院選の際も昼食の時間に政治の話をしていたりしていたのできちんと自分で考えて投票してくれると信じています。
もちろん今の政権の問題はたくさん話しました。笑
— 柴山昌彦 (@shiba_masa) September 7, 2019
恐らく、柴山大臣はこの一連のツイートの中で、教員を名乗るアカウントが「投票しないように」と呼びかけたことに反応したと思われる。しかし、この教員のツイートをみると、民間の英語検定を受けるためにはお金がかかること、新しい共通試験の採点を委託されるベネッセが進研模試を実施しているのはおかしいなど、新しい共通試験の問題点を指摘している。教員が「投票しないように」とツイートしたことを「選挙活動」と言いたいのだろうが、そもそもお粗末な入試改革をしていることが問題なのだ。
さらには、不適切ツイートに対する異議に対して次のように反論している。
「こうした行為は適切でしょうか?」だけならばきちんと見れば教員に反論しているとわかるのだが、これだけ大きな問題になっているにも関わらず、こうした反論しかできないのは理解できない。「私は教員の呼びかけに対して言っている」と一言いえば、それなりに理解できる人もいただろうが…
教員の政治活動は禁止されている。「学校教育法に規定する学校の校長及び教員は、学校の児童・生徒等に対する教育上の地位を利用して選挙運動をすることができないこと。」と公職選挙法第137条に記されている。教育上の地位、つまり教育現場で投票を呼びかけなければ、一個人としてネット上で書くことはグレーゾーンだろう。
文部科学大臣でもあり自民党国会議員である柴山文科大臣の今回のツイートは、一連の流れを見る限り、「高校生が昼休みに政治の話をしたことに対して、不適切だとツイートした」ととらえられても仕方ない。
政治活動は誰にでも保障された権利である。それが選挙権のない未成年の子どもであっても。また、表現の自由は誰もが生まれ持った権利であり、日本国憲法でも保障されている。それを文部科学大臣であり、与党国会議員であり、弁護士資格も持った人間が「不適切」と切り捨てている。
選挙権が与えられる年齢が18歳になったことによって、高校生の一部にも選挙権が与えられるようになった。しかし、投票率を世代別で見た時には低い状況が続いている。教育を所管する文部科学大臣にとって投票率を上げることは責務である。そうした人間が、高校生が政治の話をすることを切って捨てたと捉えられることは不用意であったとしか言いようがない。
2020年に受験する人間にとっては入試改革は何よりも関心事だろう。それは学校で指導する教員にとっても同じことが言える。その制度の不備についての会話の中で出た発言であり、少し行き過ぎているかもしれないが怒りにも似た感情が出た表現と理解できる。
文部科学大臣であれば、まずそのことに対してお詫びをした上で、発言をするべきではなかっただろうか。